大正6年の東京湾台風と鋸南町

令和元年の台風15号は鋸南町を中心にした房総半島全体に甚大な被害をもたらしました。90歳を超えるお年寄りが生まれて初めて経験したという凄まじい被害で、鋸南町では約3,600戸中約2300戸、6割以上の家屋が被害を受けたと言われます。一部では今回の台風を東京湾台風と呼ぼうという動きもあるそうです。

しかし東京湾台風と呼ばれている台風災害が既に存在していることをご存知でしょうか。それは大正6年に甚大な被害をもたらした台風災害でした。

Wikiには大正6年の高潮災害として記述されています。東京の佃島、月島、品川、深川、千葉の市川、船橋などが台風の高潮によって甚大な被害を蒙り、死者・行方不明者数1,301人、全壊家屋43,083戸、流出家屋2,399戸、床上浸水194,698戸という凄まじい被害を出しました。
【災害記録帳】東京湾を襲った「大正六年の大津波」の謎https://plaza.rakuten.co.jp/chizulove/diary/201410010000/

Wikiのリンクにはこの災害による千葉県の被害をまとめたPDFが貼られていますが、これによると現在の鋸南町を始めとした南房総地域は被害記録未確認となっています。じゃあ大したことが無いのかなと思ってしまいますが、実態は違っていました。

鋸南町史にある東京湾台風の被害記録は南房総地域にも甚大な被害をもたらしたことを物語っています
東京湾台風経路図.JPG
大正6年9月30日から日付が変わった10月1日午前2時、南東の暴風雨となり木が倒れ、家が倒壊し、漁船は粉砕されました。午前3時には風位はやや西へ、午前4時には西北風に転じて漸く勢力が衰えて夜明け前に南風、正午頃に収まりました。

この台風では当時の保田町に詳細な記録が残っていました。保田町の沿岸家屋約350戸のうち全壊58戸、半壊47戸、浸水240戸で殆ど全滅といっていい大被害です。漁船の破壊は41隻、即死4名(倒壊した家屋の下敷き)、負傷7名、山間部でも倒壊3戸となっています。

現在の鋸南病院付近にあった駐在所が跡形もなく流出し、現在の国道にかかる七面橋も流出しました。道路は欠損して不通箇所延長2kmに渡り、路上には倒壊した家屋、器具、木材、破船が入り乱れて足の踏み場もなく、「箪笥流れて田中に漂い、寝具翻って樹上にかかり、鶏死して半ば土中に埋まり、墓地崩壊して白骨砂上に横たわるもの等、全く酸鼻を極めた」と鋸南町史は記述しています。
東京湾台風の保田町被害図.png
明鐘岬の県道(現在の国道127号線)は海抜12mにあって、石垣で護岸を固めていましたが、台風の高波はトンネル内にも侵入して石垣の石が中に転がっていたと言われます。そのことから見て12~13mの高潮が保田の沿岸を襲ったものと考えられるのです。

被害図を見てみると、国道の海側がすっかりやられており、一部は国道を越えてさらに奥まで侵入しています

大正6年の東京湾台風は上陸地点付近の沼津で929.5hPa(館山では970hPa)、風速は館山に於いて午前1時に35.8m、午前2時に30.3m、午前6時に18.2mとなっています。

今回の台風15号は千葉市上陸時に中心気圧960hPa・最大風速40m/sとなっていますので、台風15号の方が東京湾台風よりも強力と言えそうです。台風15号の1時間雨量は鋸南町で70mm、最大瞬間風速は館山で48.8m/s、木更津で49.0m/sとなっており、風は圧倒的に今回の方が強く、代わりに高潮の被害が無かったということになるのでしょう。

ここまで詳細な記録が保田にある一方で、勝山には詳細な記録はありませんが、町史には竜島海岸の海岸林全滅、新築の小学校半壊、駅倒壊なとど記されています。大正6年と言えば勝山、保田の鉄道開通の年ですが、この激烈な災害の結果、復興に手間取り海水浴場らしくなったのは大正10年頃になったとのことです。
顕彰碑2.JPG
顕彰碑1.JPG
そういえば勝山海岸の松林の脇にひっそりと建っていた顕彰碑を思い出します。大正3年から11年にかけて勝山町の町長だった小藤田伊助を讃えた碑で、台風によって海岸の松林が壊滅した後、その再建に尽力して甦らせたことを讃えていました。その松林も今回の台風で再び全滅に近い被害を蒙り、無事な松が見つからないくらいの惨状でした。


10/8現在、日本に接近中の台風19号は再び房総半島に襲来する可能性があり、しかもその際は大潮と重なります。損傷した屋根からの再度の雨漏りなど風雨への備えも重要ですが、高潮対策のことも頭に入れておく必要があると思います。歴史に学び、少しでも被害を軽減させてきましょう。

鋸南町は現在、台風15号により町全体が大きな被害を受けています。
下記にて義捐金の受付を行っていますので、皆様のご支援をお願い致します!!

ふるさと納税:令和元年台風15号 千葉県鋸南町



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この記事へのコメント

Yayoi
2019年10月10日 23:16
100年ぶりの大型台風だったのですね。この記事、大変興味深いです。そして、そうせいさんの人となりも。ブログを読みふけってしまいました。ありがとうございます。
そうせい
2019年10月12日 11:19
コメントありがとうございます

今回、岩井袋では電柱の上に布団がぶら下がるという、東京湾台風と同じ光景が出現していました。人は変わっても町の地形は変わらないので、過去の災害に学ぶことは本当に大切です。