土中環境を読む

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土中環境 忘れられた共生のまなざし、蘇る古の技』という本を読んで感じるところがあったのでご紹介です。著者は千葉で造園業を営む高田宏臣さんという方で、いわゆる自然農法の考え方にインスパイアされて、それを山や森の環境を見るやり方に応用した活動をされています。

自然農法というのは無農薬・無堆肥で、雑草取りや土起こしもしないという農法です。
福岡正信さんという方が瀬戸内で始めた方法で、自然の生態系をしっかり整えることで土壌はミミズや微生物によって自然に耕され、作物を食い荒らす害虫も天敵が沢山いるので増殖することも無く、そういう生存競争の中で作物自身の生命力も高まるので病気にもならないし、虫にも食われない

ここから木村秋則さんの奇跡のりんご、岩澤信夫さんの耕さない田んぼ等が生まれており注目されている考え方です。
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山の斜面が崩落したり、木々が枯れて行くのは何故なのかを考え、高田さんは木の根と菌糸が深く張り巡らされることで、山の土中で水と空気が循環しているということを発見しました。地中深くまで到達した木の根と菌糸によって水と空気が循環することで山全体の保水力が高められているので、大規模な豪雨があっても川の水は清らかで土砂崩れも起こりません。

ところがここに砂防ダムを建設すると、重量物がドンと出来上がることによって土壌は固まり、地下の伏流水と空気の流れが遮断されてしまいます。そうすると木の根が浅くなり、水も行き場をなくしてしまうので少しの雨で土壌が流出し、豪雨ともなれば限界を簡単に超えて土砂崩れが発生します。

よく土砂崩れの現場などでは崩れたところから地下水が流れ出ていますが、これは地中に閉じ込められた伏流水が行き場を求めた結果であるということです。高田さんによれば土砂崩れというのは自然が最も安定した地形になろうとする現象で、崩れた箇所をコンクリートの法面で無理やり固めてしまったら、別の弱いところが崩れてしまうとのこと。
土中環境_溝.JPG
これは道路についても同じで、山の中にアスファルトの道路を作ると水と空気の流れを遮断して土砂が流出してしまう。思い返してみれば山中の道路が崩落した土砂によって埋まったり、路肩が崩れたりすることはよくあるものの、何もないところでそうした現象を見かけることは稀です。

道路脇の排水溝もコンクリートのU字溝では水と空気の流れを遮断してしまい、そこから弱くなってしまうとのこと。昔の道路も溝が掘られていますが、これは排水を目的としたものではなく。土中の水が溝から染み出して道路の下に潜っていくためのもので、目的が違うそうです。

そういう自然の仕組みを生かした道づくりの代表例として高田さんは熊野古道を挙げています。千年以上山の中にあって自然と一体となって調和した道。これこそが現代の技術が忘れてしまった智慧であるといいます。

そうやって維持された清らかな川の水が豊かな海の恵みをも育んできた。南房総は険しい岩山が海岸ぎりぎりまで迫り出しているような地形が多いですが、これも山からの伏流水が海に染み出しすことによって、美しい海水を作りだし、豊かな漁場を作り出しています
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昨年の台風によって山の中の土砂崩れが多発し、利用頻度の低い道路については未だに写真のように崩れたまま放置されています。この土砂をどけて、崩落した斜面をコンクリートで固めるとなると相当の費用になるでしょうし、町自体も財政難ということで「何もしない」ということになるのかなあと思っています。

今後、南房総を同じような台風が何度も襲うことになるだろうとは、地元の人たちが等しく抱いている考えでもありますし、大規模な土木工事ではなく、山の環境を改善してトータルの保水力を挙げて行く方向に舵を切っていくことが必要ではないかと思うのです。

とはいえ今あるものを無くして何でもかんでも自然のままにすればよいという話でもありません。本書ではダムの建設が周辺の土中環境と河川の水質を悪化させるという問題点を指摘されていますが、鋸南町にある3つのダムが完成する前は慢性的な水不足に苦しんできたという歴史があります。

必要なものと不必要なものをきちんと選別して、新しい発想で従来の治山治水を見直してみるということが求められていくのではないかと思います。

鋸南町は現在、台風15号により町全体が大きな被害を受けています。
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ふるさと納税:令和元年台風15号 千葉県鋸南町



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